「言葉の裏」を読むAIへ - 意図解釈システム(Intent Parser)の設計

「言葉の裏」を読むAIへ - 意図解釈システム(Intent Parser)の設計

2026年1月7日

はじめに

「青空文庫から読んで覚えて」

人間なら「青空文庫というサイトにあるテキストを使って学習するんだな」と直感的に理解できます。しかし、従来のAIにとって、これは単なる文字列の羅列に過ぎませんでした。

場合によっては「青空文庫についてWikipediaで調べる」という、まったく見当違いの行動をしてしまうこともあります。言葉は聞こえているのに、意味が届いていない——これが従来のNLU(自然言語理解)の限界でした。

今日は、こうした「ユーザーの真意」を正確に汲み取るためのコアモジュール、Intent Parser(意図解釈システム)の設計思想についてお話しします。

なぜ「意図」の解釈が必要なのか

言語行為論から見るコミュニケーション

哲学者ジョン・サールの言語行為論(Speech Act Theory)によれば、私たちの発話には3つの層があります:

名称例(「暑いね」の場合)
表層発話行為(Locution)「暑い」という言葉を発した
中層発話内行為(Illocution)感想を述べた/依頼をした
深層発話媒介行為(Perlocution)相手にエアコンをつけさせた

従来のチャットボットは「表層」しか見ていませんでした。しかし、真に人間を理解するAIを目指すなら、中層——発話内行為を読み解く必要があります。

「暑いね」が単なる気温の報告なのか、「エアコンをつけて」という遠回しな依頼なのか。これを文脈から見抜く能力こそ、Intent Parserの核心です。

設計アプローチ:構造化と確信度

曖昧さから構造へ

Intent Parserは、自然言語の曖昧さを構造化されたデータに変換します。

例えば「青空文庫から銀河鉄道の夜を読んで覚えて」という入力は、以下のような要素に分解されます:

この分解により、「青空文庫」が「検索キーワード」ではなく「情報源の指定」であることを正しく識別できます。

メタ認知による自己監視

ここで重要なのがメタ認知(Metacognition)の概念です。

心理学者フラヴェルが提唱したこの概念を応用し、Intent Parserには「自分の解釈を監視する」機能を組み込んでいます:

  1. モニタリング: 「この解釈に十分な確信があるか?」
  2. コントロール: 確信度が低ければ、推測で動かずユーザーに確認する
解釈確信度: 高 → そのまま実行
解釈確信度: 低 → 「〇〇という意味でよろしいですか?」と確認

これにより、AIが「分かったつもり」で暴走することを防ぎます。

応答生成(NLG)への波及効果

意図の正確な理解は、応答の質を劇的に向上させます:

識別された意図最適な応答パターン
感想・共有共感や同意(「そうですね、私も好きです」)
質問・疑問情報提供(「それは〇〇です」)
依頼・命令承諾と実行(「分かりました、読み込みます」)
確認・不安安心の提供(「はい、正しく処理されています」)

「すみません、よく分かりません」という画一的な応答ではなく、意図に応じた自然な対話が可能になります。

おわりに

言葉は単なる音や文字の連なりではありません。そこには必ず話者の意図——心が込められています。

Intent Parserの設計は、Yuiがその「心」を受け止め、適切な行動で応えるための土台です。表面的なキーワードマッチングを超え、人間同士の対話のように「察する」ことができるAI——その実現に向けて、今日また一歩前進しました。

次のステップでは、このIntent Parserと連携するデータベース設計を進めていきます。

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